「ペテロの葬列」感想まとめwiki(ネタバレ注意)

第一話

宮部みやき原作、杉村三郎シリーズ第2弾ペテロの葬列。主人公杉村三郎は(小泉光太郎)は、今多コンツェルンの広報室という会社専属の編集室の副編集長兼記者です。以前は出版者の編集者でしたが、今多コンツェルンという大企業の娘菜穂子(国仲涼子)との結婚条件の為グループ広報室で会社の広報誌を作っています。そして、妻と娘に囲まれた日常を送っています。

ある日杉村(小泉孝太郎)は、編集長の園田瑛子(室井滋)、手島(ムロツヨシ)と共に元今多コンツェルン取締役であった森信弘(柴俊夫)への取材の為、森(柴俊夫)が妻の介護の為移り住んだ房総の地にやって来ます。妻菜穂子(国仲涼子)と面識のある森信弘(柴俊夫)との取材は和やかに進みます。また、森(柴俊夫)は地位を捨てても大切にする、今は認知症になってしまった妻への思いを語ります。

同じ頃妻菜穂子(国仲涼子)はエステを受けており、帰り際信頼のおけるエスティシャン(長谷川京子)にエステを辞める事を告げられショックを受けます。

取材は無事終わり、帰り3人はバス乗車します。バス停に着き老人が降りると思われた時事件は起こります。老人(長塚京三)の手には拳銃が握られ、バスの運転手、芝野和子(青山倫子)の額に推しあてられていたのです。初めは状況が掴めない乗客も老人(長塚京三)の発砲により、拳銃は本物で自分達がバスジャックされたことを覚ります。運転手(青山倫子)、坂本(細田善彦)、前野(清水富美加)、田中(峰竜太)、迫田(島かおり)、杉村(小泉孝太郎)、園田(室井滋)、手島(ムロツヨシ)の男女合わせ、8名が人質となりバスは廃業となった工場跡地に向かいます。体の悪いと思われる老人でしたが用意周到に考えられた計画によって人質達は抵抗できる術を失います。

不安な状況の中老人(長塚京三)はバスを停車させ、運転手である芝野(青山倫子)、そして老婦人の迫田(島かおり)をバスから降ろし、警察に通報するようにという意外な指示を与えます。バスの運転手として残ると抵抗した柴野(青山倫子)でしたが、乗客の為迫田(島かおり)と下車し付近の民家に通報に走ります。

要求の見えない中老人(長塚京三)は人質皆に自己紹介を求め、自分は佐藤一郎と名乗ります。そして、奇妙な提案を人質に投げかけます。「一億円を上限に解放後慰謝料を払います。」その実現不可能なような提案にのり、自分の身の上話等話し出す人質達に、バスジャックという環境を忘れるような一体感が生まれ佐藤(長塚恭三)のペースになっていきます。

皆、必要な金額を語り、普段の日常や夢、やりたい事等自由に語り合います。そしてそんな状況を冷静に観察する杉村(小泉孝太郎)。そんな中編集長園田(室井滋)は普段と全く違い、取り乱します。その姿に、杉村(小泉孝太郎)、手島(ムロツヨシ)も動揺します。園田(室井滋)は明らかに衰弱しこの状況の異様さを叫びます。そんな中やっと事態を把握した警察によってバスは囲まれることになります。

そしてようやく犯人である佐藤(長塚京三)はバスジャックを起こした目的を語ります。お金でもなくこうして警察に本気になって探してほしい人がいることを語ります。皆の興味が集まる中、3人の悪人という人物の名前、住所を警察にメールし、時間内に連れて来るようにと佐藤(長塚恭三)は要求します。そして警察からの条件として一人解放することになり衰弱の激しい園田(室井滋)を開放します。開放される際、園田(室井滋)は憎しみの表情で、佐藤(長塚恭三)のような人を知っていること、そして嫌悪感を語ります。そして佐藤(長塚恭三)も園田(室井滋)が考える人物と自分は違うとしながらも園田(室井滋)のイメージする人物を理解し代わって謝罪します。無事バスを降りた後も園田(室井滋)には過去の映像がフラッシュバックしていました。

事件が警察によって把握され、今多コンツェルンにもその情報が伝わります。杉村の妻菜穂子(国仲涼子)も知ることとなります。心臓病を患っている為周囲に心配されながらもいてもたってもいられない菜穂子(国仲涼子)は杉村(小泉孝太郎)の元へと秘書の橋本(高橋一生)の車で向かいます。

そして時間は立ち約束の時間を迎えます。」警察との交渉の為佐藤(長塚京三)が携帯電話を手にした瞬間、あたりは光に包まれ、次の瞬間警察の突入がはじまります。皆が無事に確保されたと思えた瞬間、前野(清水富美加)の悲鳴と号泣がバスに響きます。佐藤(長塚京三)が血を流し倒れていたのです。人質が無事保護される中杉村(小泉孝太郎)は警官に佐藤(長塚京三)の死の原因を問います。警官は突入した瞬間に自分で拳銃を使った自死であったと告げます。謎が多い中無事解決したように事件は終わり、次回へと続きます。

(感想)

杉村三郎シリーズということもあり、楽しみにしていた作品が始まった。期待通りその内容に初めから引き込まれていった。ハイジャック犯とは思えない老人によって始まったハイジャック。しかしその、ハイジャックは暴力、恐怖とはまた違う奇妙なものだった。

犯人からの慰謝料を約束する等ハイジャック犯とは思えない提案。その人柄に人質、犯人とは思えない関係性、一体感が生まれていく。犯人の目的は?そして犯人が口にする3人の悪人とは誰なのか?そして何をした人物なのか?次々と生まれる疑問に目が離せなくなる。また、編集長の秘密とは何か?過去に経験したであろうトラウマを感じさせる。人の心の奥底に潜むものが何なのか考えさせられる作品だ。最後は老人の死という完結に思えるがどうも腑に落ちない。その裏に潜むであろう真相を早く知りたいという欲求にかられる。

また、杉村と妻、そして今多コンツェルンにも関わるであろうと想像できる。犯人である老人は自殺という結末を迎えたが、ここから様々な人間模様が見れる人間ドラマが始まった。まだまだ謎が多いこのドラマの続きが早く知りたいと夢中にさせるドラマである。

第二話

「感想」

前のドラマ『名もなき毒』では、ごく身近な市井の人々の心の奥底に眠る、“悪意”というものを描いていていた。
そこまでやるのか、という理解不能な薄ら寒さを感じたものだが、今回は違う怖さがあるらしい。
どうやら根の深い“恨み”をテーマにしているようだ。それはそれで、怖い。

先週の『ペテロの葬列』では、スペシャルとして2時間にわたり、ある老人にハイジャックされたバスの中での、濃密な犯人と乗客とのやり取りを描いていた。
今週は解放された乗客たちの、その後の状態を描いている。不可解なバスジャック、不可解な犯人の要求、そして恐怖への慰謝料が、これからの謎解きの要素となっていくらしく、想像を掻き立てられる。

私は原作を読んでいないので、ストーリーがこの後、どういった展開となっていくのか知らない。なので純粋にドラマ自体を楽しんでいるのだが、『名もなき毒』の時と同様に、感心していることが一つある。
それは、出演者がそれぞれ、登場人物として少しも違和感なく、役にマッチしていることだ。

ちょっと気弱だが誠実そうな杉村三郎に、小泉孝太郎。
その妻の、金持ちで何不自由なく育った、しかし実は今多コンツェルン会長の庶子である菜緒子に、国仲涼子。
広報室編集長の園田瑛子に、室井滋。
優しそうで美しいが、ちょっと陰のある訳ありな元エステティシャン間野京子に、長谷川京子。
謎のハイジャック犯佐藤一郎に、長塚京三。
金のことばかり頭にある、欲深そうな田中雄一郎に、峰竜太。

まだまだ脇の俳優たちに、なるほどと思えるような出演者たちがいるのが、今後の展開とともに、彼らがどういった役割を果たしていくのか楽しみだ。

今回新たにドラマの謎解きのヒントとして表れたのが、一枚の絵だ。広報室のメンバーがよく利用する喫茶店に架かっている絵画、『ダイヤのエースを持ついかさま師』である。
この絵でもっとも印象的なのが、女の目である。いかにも、只者でない雰囲気が漂っている。
それもそのはずで、この絵は高級娼婦、その侍女、いかさま師の三人が、右にいる裕福な若者の身ぐるみを剥がそうと虎視眈々としている様子を描いているらしいのだ。17世紀当時の主な3つの誘惑(淫蕩、飲酒、賭博)を道徳的に戒める表現との解釈である。

この絵がいったいどんな役割をになっているのだろう。

劇中で杉村三郎が、犯人を『教師だと思った』と言うくだりがある。
拳銃を2度も発射させたにもかかわらず、人質を傷つけるつもりはなかったようだ、と思わせる犯人。そして弁舌がたつところから教師だったと想像されるという。
編集長の園田が「私はあなたのような人を知っている。嫌いだからすぐに分かるの」と謎の言葉を言い、解放後に出社せず引きこもってしまう。ここにも過去に彼女の身の上に何かがあったらしいことが窺え、ドラマの枝葉としての楽しみも与えてくれる。

題名のペテロとはおそらく、ハイジャック犯である佐藤一郎のことを指しているのだろう。キリストの使徒の一人とのことらしいが、佐藤が過去何に仕え、誰を裏切り、復讐を企てるに至ったのか。

登場人物たちを淡々と描きながらも、卓越したストーリー展開が、この後も期待させるドラマとなっている。

第三話~大金が人質たちの運命を狂わせる

「感想」

とうとう杉村三郎の家にも宅配便が届けられたところから物語は始まる。
中身は300万円。
それはいいのだが、のっけから驚いたのは、杉村が銀行の帯封を切り、お金を勘定するシーンだ。えええっ、帯封切っちゃっていいの?それって受け取りを了承したことにならないの?

田中雄一郎から電話が架かってくる。彼の心配は、「皆が警察に届けてしまわないか」と「他の人はいくら貰ったか」である。あまりにも露骨な聞きようだ。まあ、正直と言えば正直なのだろうが。
彼の心配を受け、杉村はバスジャック被害者たち皆で一度集まろうと提案する。
場所は例の絵が飾ってあるカフェ。くせ者のオーナー水田大造がいるお店だ。

今回は傾きかけた工場の経営者、田中雄一郎を中心にストーリーは展開する。運転資金のために、一刻も早くこの慰謝料を使ってしまいたい田中は、受取りをためらっている他の人たちとの軋轢を生む。
前野メイが「おじいさんは裕福そうに見えなかった」と同情的な意見を言うと、ピストルを首筋に押し付けられ恐怖を味わった田中は、「慰謝料を貰うのは当然だ」といきり立つ。確かに理屈は通る。だがあまりに露骨な金欲しさの態度は、場の空気を悪化させていく。
田中の工場の事情、家庭の状況が描かれるにつれ、ちょっと同情的な気持ちも湧き起ってはきたが…。

「おじいさんのことを少し調べませんか」
運転手柴野和子の言葉を受けて、杉村が仲介策として提案する。
今はお金のことを警察に言わず秘密にしておき、出来るだけお金の素性や出どころを調べてみましょう、と。冷静な判断かもしれない。怪しい素性だった場合、あとからマズイ問題に発展する可能性だってあるのだから。

取次の場所を調べるため皆が送り状を取り出すと、場所は関東近縁に散らばっている。しかも筆跡はバラバラ。共犯者は複数いるのでは、という疑問が生まれた。
しかも初めてバスに乗り合わせたというのに、犯人の佐藤一郎(暮木一光)は、柴野の子供の名前を知っていた。おかしい・・・。

驚くべき記憶力で、暮木が上げた3人の名前(高東憲子、中藤ふみ江、葛原昭)と住所をスマホに残していたメイから、それをメールで送ってもらい、杉村と手島雄一郎は3人の素性を慎重に調べることにした。

やがて分かって来たこととは、高東という人物が架空投資詐欺を行い警察に捕まった過去があるということだった。
詳しい事情を教えてくれた酒屋の主人はこう言う。
「この先子供には迷惑をかけられない、そう思って騙されちゃうんだよ」
なんだか胸のつまる言葉だ。自分の生活の負担を子供にはかけさせたくない、と思う優しい親心をうまく衝いてくるのが投資詐欺なのか。

もう一人、伏線らしき登場人物が現れる。先週ちらっと出て来た新聞配達員だ
彼は公園のベンチに座る妊婦に近づき、あるファイルを強引に渡す。そこには『高越勝巳に関する調査報告書』とあった。彼女の夫に関するものだ。開くと、数々の詐欺事件の内容が書かれていた。
この新聞配達員の行動は、一連の騒動とどう繋がって行くのだろう。

また、妻の菜緒子にも内緒にしているお金の件を、どういうわけか間野京子に話してしまった杉村。彼の心の中に起こった変化とは何なのだろうか?
この先、嵐が巻き起こることを予感させる終わり方だった。

第四話~30年前の真実から悪の歴史へ 動き出した後継者争い

第4話は園田の過去にからめて、今多会長が事件に深くかかわっていたことを解き明かしていく回となっている。 一時期さかんに目についた“人材開発セミナー”という文字。もちろん今もあるのだが、一部のセミナーによる激しい研修内容は、時折テレビなどで紹介されており、その過激な内容に私は驚いたものだ。

1984年当時の、この話に出てくる『フェノミナ人材開発研究所』という会社で行われていたのは、自己啓発というより、“反省室”という名の鉄格子の付いた窓のある牢獄に、言う事を聞かない人間を押し込め、24時間スピーカーで自分たちの考えていることを流し続けるという拷問であった。 ここでは優秀な企業戦士を育てるというよりも、感情・プライドといったものを徹底的に叩き潰し、ただ自分(トレーナー)の言うがままに行動するロボットを製造することを目的としていた。

園田は耐えきれず、頭を壁に打ちつけて自殺を図ろうとし、その後一年間会社に出て来れなくなった。実態を知らなかったとはいえ、良かれと思って出した研修により、社員が一人殺されてしまうところだった。今多はなぜ園田を送り出してしまったのかと悔やみ、このグループを徹底的に糾弾しようと決めた。その後、当時のトレーナーだった男は、大阪でおこったマルチ商法事件に関与していたことが分かった。そんな会社に研修を任せていたとはと、今多は増々ショックを募らせる。

私が思うに、今多は園田の強情な性格を研修によって直してもらおうと考えていたのではないか。しかし自分が指名して送り出したことにより、彼女が自殺を図る事態に発展してしまった。これがきっと今多の心に大きな負い目を作ってしまったのだ。

「ST(センシティビティ・トレーナー)という怪物が、どう形を変えどこへ向かったのか、知っておきたい。その重要なヒントとなるものが、このバスジャック事件にはあると思う」 今多が放ったこの言葉こそ、物語のキーとなるものだ。 STなるものが、マルチ商法においての関わり、つまり捉えたカモにいかに売りつけるかの説得技術を教え込む悪意ある集団となった場合、非常にこわい存在になるというのがよく分かる。

ただ、男が数年後自殺し、杉村は誰かに殺されたのかと疑うが、今多はきっぱりと「自殺だよ。殺すほどの相手じゃない」と答える。しかし彼同様、私の背中にも冷っとするものが流れたのは何でだろう。

伏線として登場していた新聞配達員の足立則夫。今回、彼の仕事場に、ふいに高越勝巳が現れる。 彼は足立を締めあげて言う。「ホームレスだった頃のことを全部ぶちまけてやろうか。どんだけ人間の屑だったのか」。足立もまたマルチに関与していたのだろうか。 そして高越はその後殺され、重要参考人として足立が指名手配されることになる。

園田のことだが、今多会長が直々に会いに来て、「そのままでいい。園田はそのままでいい」と言ってくれたことに心の重荷を下ろし、何もなかったかのように出社する。 泣かせる言葉だ。自分のアイデンティティ崩壊の危機にあたり、「そのままでいい」と。そういえば最近ヒットした曲も「ありのままに」だったなぁ。 第4話にも絵が登場した。それがムンクの『思春期』。裸の少女の絵だが、どこか病的な表情をしている。生への不安や恐れを表現しているとのことで、『叫び』とテーマが似ているという。

井出は間野に、アンタ絵に似ていると言い、なぜかストーカーのように間野の周囲に表れる。怯える間野。 何を考えているのか分からない2人が、この先物語をどう引っ張って行くのか気になるところだ。

第五話~秘密の告白 新たな殺人/悪が家族に伝染する

菜緒子が子供の桃子に絵本の読み聞かせをしている。題名は「ハーメルンの笛吹き」だ。
『・・・ひょっとすると本物の悪魔かも知れない。たった一回笛を吹いただけで、俺たちの大事な金を持っていかせるなんて』示唆的な言葉だ。
さらに菜緒子は小さな頃からずっと考えていた。『村人はなぜ笛吹きにお金を払わなかったんだろう』と。杉村は『お金を払うのが惜しくなったんだろう』と答える。

逃走している足立と、殺された高越との関わりが少しづつ分かってくる。
杉村が足立に報告書を渡した、故北見探偵の家を訪ねたことから、物語は展開していくのだ。
足立は傷害の前科があるため就職が難しく、ホームレスをしていた。その時期に高越から金になると話を持ち込まれ、住宅ローン詐欺に加担したことがあった。今の生活から足を洗いたくて加担したのだが、罪の意識に耐え切れず、今も繰り返しているであろう高越の詐欺を告発するため、足立に相談をしに行ったのである。北見は足立の中に、罪を悔いる善の部分を見た。そして彼を救済する為、就職の手助け、身元保証人を引き受けてくれた。
北見を信じている彼の妻と息子もまた、足立を信じていた。杉村は、そんな彼らを見て心を動かされる。北見ならどう行動しただろうか、と。

悪は伝染するが、善もまた、伝染するのではないだろうか。ふと私は思った。

一方間野涼子だが、「職場の宴会がはけた後、2人で話がしたい」と杉村に言う。淡い期待を抱く杉村だったが、彼女の口からは、思いもかけぬ言葉が発せられる。井出からパワハラ・セクハラを受け、断わり切れずに悩んでいるというのだ。意外なことに彼女は自分を責めていた。「私にも責任があるのかも。女の人に問題があるという人が、いますよね」と。間野はすべてうまくいかない事を、自分が悪いせいだと思い込んでいたのだ。
だがその後、園田から言われた言葉に、気が楽になる。
「みんな思うようにいかないもんよ。うまくいってる人なんているのかな。間野さんて子供も若さも美貌も何だって持ってるじゃん。だから同情しない」
考えてみれば、人は他人から見たら随分ぜいたくなことを悩んでいたりするものだ。だから、ほんのちょっとのアドバイスで気づかされることもある。言ってくれる人がいる、ということが、一番の幸せなのかも知れない。

喫茶店『睡蓮』で、杉村は一人の男と話していた。男は日商フロンティアの代表の小羽が、若い頃に努めていた英会話教材の元同僚だった。その後小羽と一度会った時には、ずいぶん羽振りが良くなっていて、経営コンサルタントの男を連れていたという。残念ながら顔も名前も憶えていないと言ったが、その後メールで、コンサルタントからもらった名刺が出て来たからと、添付して送ってくれた。そこには「御厨尚憲」と書いてあったが、本名なのだろうか。暮木かもしれないと誰もが疑問を抱く。

杉村が足立の為に奔走している間、菜緒子は彼に対して心に亀裂が生まれるのを感じていた。
自分たちよりも他人を優先する夫。それに対し、休日だというのにわざわざ桃子のコンサートに足を運び、しかも黙って帰ろうとしている会長の秘書の橋本。他人なのに自分たちを優先してくれる男だ。菜緒子の心は彼に引寄せられていくのか?波乱の予感がここにもある。

杉村は足立を霊園で発見し、説得して北見の家へ連れて来た。高越の妻が訪ねて来るから、話した方がいいと言って。
「俺は殺していない」と足立が言うと、高越の妻からは意外な返事がもどってくる。
「わかっています。高越を殺したのは、アナタじゃない」
では犯人を知っているのか、という質問には答えようとしない。なぜなのだろうか。ここにも秘密がありそうだ。

そして今回の絵は、聖書の一場面だという「グレートレッドドラゴンと日をまとった女性」。
(聖母マリアが産みの苦しみに横たわっていると、産み落とされた赤子を取って喰おうとするレッドドラゴンが現れる)というものらしい。ドラゴンはキリスト教を迫害するローマの象徴とのことらしい。
余談だが作者はウィリアム・ブレイクで、彼の詩に曲をつけたものが、イングランド国歌の一つとして歌われているとのことである。

第六話 母の愛と罪~新たな殺人の真犯人!バスジャック犯と人質の接点が明らかに!

今回の見どころは2人の女性が、それぞれの数奇な運命を語るところだろう。

まずは高越の内縁の妻、井村絵里子。

高越は刺された体で新聞配達所に現れ、足立に抱き付くと「お前がやったんだ」と言って死んだ。驚愕のあまり足立はその場から逃げ、犯人とされたわけなのだが・・・。

北見の家で足立と会った井村は、「私が犯人です」と告白する。ではなぜ高越はわざわざ足立に会いに行き、そこで死ぬようなことになったのだろうか。

それは井村の生い立ちに秘密があった。彼女が小学2年生の時、両親は手形詐欺に遭ったことが原因で心中した。その後一人で生きて来た彼女は、働いていたキャバクラで高越と出会う。強引に押しかけて来た高越と暮らすようになり、子供が出来たのだが、どこか高越を信用しきれずにいて、結婚は踏み切れなかった。そんな時に足立からファイルを渡され、やはり高越は詐欺師だったのだと愕然としたのだ。そして口論となり、お腹の子を刺し心中すると言ってナイフを持ち出した井村と、止めようとする高越とが揉み合いになり、倒れた高越の腹にナイフが刺さってしまった。

不思議なのだが、高越は「救急車は呼ぶな。生まれてくる子の父親が母親に刺されたなんてマズイだろ。大丈夫だから。引け」と言ってナイフを井村に引き抜かせて処分させ、自分は足立に罪を被せるために歩いて配達所まで行ったのだった。

この高越と言う男は、詐欺師なのだが、優しい部分と冷たい部分とが混在していて、この男もまた生まれに複雑な要素があったのではないかと考えさせられる。

井村の生い立ちを聞くと「可哀想だ」と言って泣くかと思えば、平気で詐欺をする。

「詐欺だ、詐欺だって言うけど、お前もお前の親も貧乏くじ引かされたのを、俺が取り返してやってんだぞ」と言い、井村が「おかしいよ、そんなの。自分が騙されたから他の人を騙してもいいなんて」と返すと、「世の中そうやって回ってんだよ。食い物にされたくなかったら、騙すしかないんだ・・・」。

う~ん、この人の過去に何があったのだろう。この物語では多分やらないだろうけど、何か気になる。

それはともあれ、詐欺によって両親を亡くした彼女は人を騙す、ということが許せなかった。だから、高越の言ったとおりに嘘をつき、足立に罪を着せて周囲から同情を買う自分をもまた、許せなかった。嘘をつく罪の重さに耐えかね、苦しんでいたのだった。

ここにもペテロが一人いた。

それを聞いた足立もまた、告白する。「俺が高越を刺せば良かったんだ。刺し違える勇気もなくて。(ファイルを渡したのが)正しいことだなんて」

彼もまたペテロだ。

2人目の女性は、バスジャックされた時の乗客、迫田とよ子の娘、美和子だ。

とよ子はどうやら軽い認知症に係っていて、今は安定しているとのことだが、何やら訳ありの様子である。美和子の説明によれば、長年祖母の介護をしていたとよ子は、ゆくゆくは『クレステ海風』という設備の整った高級老人ホームに祖母を入れてあげられたら、と思い、つつましく暮らして貯めた金など持てる金すべてを準備金として用意していた。そして空きが出るまで待つ間に、生活費で切り崩される金を何とか補充しようと、日商フロンティアの詐欺に引っかかってしまったのだ。

実はこのシーン、“橋田壽賀子ドラマか!”と言いたくなるような、とても長く、圧巻な台詞回しなのである。それをあたかも何でもないかのように、しかも淡々とした演技で言ってのけるこの女優さんに、私は感心してしまった。舞台女優さんだろうな、と思って調べたら、やはりそうだった。(しかも有名なドラマに結構出ていた)。

杉村は彼女が暮木を知っているのではと感じる。そして尋ねると「知ってました」と。

新たな展開が始まり、次回へと続いていく。

忘れてならないのは、間野がらみのこと。

まずは井出のセクハラを杉村に相談し、園田に注意してもらった件。どういう理由なのか、井出は副編(杉村)からパワハラを受けたと、労連へ訴え出た。なにか裏でありそうだ。

それから菜緒子が元エステティシャンだった間野を家に呼び、顔のエステをしてもらうのだが、その時のふたりの会話が意味深なのである。

菜緒子が、杉村が他人に親切なことに不満を漏らすと、「いらないなら私が貰っても?」と間野は言う。一瞬菜緒子はヒヤッとしたはず。間野は女として魅力的だから。本気で来られたら、マズイと思ったはずなのだ。

女同士の火花が散ったのが、私には見えた。杉村との仲はどうなっていくのか。

第七話  バスジャック犯の本当の目的~妻と夫の不協和音

毎回思うのだけど、このドラマはいつもあっという間に終わってしまう。

“ええっ、1時間ドラマ(正確には54分)だったよね、これ。時間間違えてるんじゃないの?”

時計を確かめると、確かに時間通りだ。面白いドラマほど、あっという間なのである。それでいて冗漫感がない。たぶん、原作の良さに脚本がうまくマッチしているのだろう。

 今回はとうとう女同士の闘いの火ぶたが切られる。

間野は自分の“女”をあからさまに出し、杉村を取りに来た。それは過去の男から逃れるために、杉村を利用しようというものなのかも知れない。

菜緒子は2人が仲良く話している場面に遭遇し、ショックで混乱し、パーティ会場を出る。それでなくても杉村から「区切りをつける時が来た。この家を出よう」と、会社を辞めることを切り出されて衝撃を受けている状態なのに。誰かに縋りたい、と思った時に浮かんだ顔は、橋本だった。彼女は電話をかけ、そして慌てて切る。だが橋本は菜緒子からの電話と分かると、かけ直してしまう。

二人は接近してしまうのか?

それはさておき、前回迫田とよ子の娘、美和子が「暮木を知っている」と言ったその理由が、今回明かされる。

迫田は軽い認知症である。いつものように『クレステ海風』へ行き、そこのベンチに座っていた時、突然正気に返ってしまう。そして本当は母はもう亡くなり、ここにはいないことに気付いて立ち去り、バス停で涙にくれる。そこへ声を掛けて来たのが、暮木だったのだ。

彼は迫田が介護していた母をこの高級老人ホームへ入れ、手厚い介護を受けてもらおうと貯めていたお金を、日商フロンティアという会社の会員である女に騙されて渡してしまったことを聞き出す。

しかし迫田は騙される方にも罪はあるんでしょ、と言う。自分が悪いと。

なんか切ない話だ。世の中には「自己責任で」とか「聞かれなかったので言いませんでした」的な商売がはびこっているような気がする。だから正直な人ほど、自分を責めてしまうのだろう。騙した方が本当は悪いのだ、とは気付かずに。

美和子が母に持たせた紙(自分の住所や美和子の携帯番号など書かれている)を見て、暮木は電話をかけてきた。日商フロンティアに騙し取られたお金を、少しだが取り戻せるかもしれないと。そしてそれは実行されたのだ。

これで暮木がなぜバスジャックなどという事件を起こしたのか、何となく分かってきた。

そんな小さなことで詐欺の様な事をする人間が改心するのか?

話を聞いていた睡蓮のマスターは、「する」と断言する。なぜかとても意味深な表情をするのだが、彼も過去に改心した“何か”があるのだろうか。

 美和子はこのお金は天からのプレゼントだと言い、他の人も警察に言わないで欲しいと頼む。それを聞いた人たちは、それぞれ心に思うところが芽生えていく。

だがお金を受け取ることで、会社に迷惑がかかると思う杉村は悩む。しかし事情を知ってしまった今、警察に言うことは出来ない。考えた挙句、彼はそろそろ会長に提出した辞表を受理してもらう時が来たと考えるのである。そして冒頭の、菜緒子がショックを受ける場面へと繋がって行くのだ。

つくづくお金というのは、罪深いものだなぁ。人の運命を狂わしていくのだから。

真面目に送り伝票から、送った人間を探していた前野メイは、あるスーパーがコンビニに代わっていることを突き止める。そこへ電話をかけるとその人間は、何か知っているようだ。

「もしかして、お爺さんの奥さんとか?」

電話は切れた。新たな展開を想像させて次週に続く。

ひとつ不思議に思った事がある。手島が美和子に、宅配便に貼り付けられている送り状のことを聞いた時のことだ。

「捨てました」と彼女は言った。ええっ、捨てたの?普通変なものが送られてきた場合、送り状は証拠として取っておくでしょ。捨てないと思うんだけど。他の人だってみんな取っておいたし。

これも何かの符合なのかな?