『ペテロの葬列』 第9話 あらすじ&感想【ネタバレ注意】

 2014-09-03 8.48.43

第9話 第二のバスジャック事件発生!~ 人質はあの人―犯人はだれか!?

今回は暮木一光(羽田)の生い立ちが早川多恵によって語られる。
彼は戦前から続く裕福な材木店に生まれたのだが、10歳の時、不審火によって実家が火事となる。怪我が元で片足が不自由な彼を助けるために、2階から下へ彼を落として助けた母をはじめ、父、兄、祖母たちは焼死してしまった。
前年に亡くなった祖父の遺産を巡り、大叔父と父とが裁判で争っていただけに、疑わしい火事ではあったが、孤児となってしまった羽田は、大叔父に引き取られることになった。しかし彼が高校を卒業する頃には、財産は大叔父が使い果たしてしまったため、資産らしいものは残っていなかったという。

多感な時期を、親兄弟を殺したかもしれぬ男と暮らさざると得なかった彼の心の苦しみは、いかばかりであっただろう。頼るべき人もいない都会へと、たった一人で村を後にした羽田。どのような孤独な生活をしていたのだろうか。
彼の心の拠り所は、幼馴染の多恵であった。そのため彼女は羽田の動向をよく知っていたのだが、彼はある時、『会社で研修を受けて資格を取り、トレーナーになった』と言ったという。
一年先輩の御厨が独立して会社を興すことになり、誘われて羽田もついて行った。そこで怪しい仕事をするようになったらしい。

ここまで聞いていた坂本啓は、『詐欺師コンビ誕生かよ』と毒づく。
多恵が羽田について話せば話すほど、なぜか啓は苛立ち、激昂して怒鳴る。
始め私は、啓が何に対して腹を立てているのか理解できなかった。1度ざっとストーリーを見た後、二度目は啓を中心にじっくりと見直してみた。すると彼の考えや行動の意味が少しだけ分かったような気がしてきた。

羽田は死後も、自分の思い通りの行動を杉村を始めとする人質たちに取らせようと、巧みに暗示をかけていたのではないだろうか。そして、その通りに操られ、動き出す自分たちを、啓はピエロのように感じたのではないか。詐欺師に踊らされ、彼の意志に沿うよう動かされているのではと。それが堪らなく腹立たしかったのではないか。
善良な人々は、タダで金をもらうことを潔しとはしない。きっと動くだろうと。その善意を逆手に取り、言葉の呪いをかけたのだ。

羽田が改心したきっかけは、川釣りをしていて溺れかけたことだった。臨死体験をした彼が見たものは、愛しい家族だ。もう離れたくないと縋りつく彼の手をほどき、三人は消えて行ってしまった。そこで羽田は、悪いことをした自分を、家族は責めているのだと感じたのである。
それから人が変わったように、金を児童養護施設や犯罪被害者支援団体などに寄付し始めた。人を騙して手に入れたお金だからと。
「やっぱり俺らに送ったのも、人を騙した金か」
啓のこの言葉には含みがある。彼はあろうことか、彼自身が今度はバスジャック犯となるのである。
その動機となったのは、彼がせっかく羽田から受け取った金を、先輩に騙し取られてしまったことなのだろう・・・多分。自分もまた、詐欺師に騙されてしまった。怒りは頂点に達していたのだ、と思う。

それにしても。ぞっとするほどの深淵を垣間見た気がするのは、多恵が発した驚くべき言葉のせいだ。
杉村の「自分と同じ罪を犯した御厨をほおっておくでしょうか」という質問に対し、
「知りません。・・・でももう、御厨は誰にも迷惑を掛けないと思うわ」
と答えたのだ。彼女はたしか、その前にも御厨に会ったことはないと言いながら、胡散臭い人だとも言っていた。知らない筈なのに、なぜ胡散臭いと分かるのだろう。
多恵はまだ何か隠していることがある・・・。絶対に。

もう一つ驚くことがある。
なんと、羽田は3悪人とは会ったこともなく、顔も知らなかったという。名指しは、誰でもよかったのか。さらに日商フロンティア上級会員の中には、何人もの自殺者がいたという。
まだまだ謎は深い。

さて杉村と間野である。井出に言われたことが頭に残っていた杉村は、間野と距離を取り始める。自分は本当に間野が好きなのだろうか、と悩みながら。
森元常務が回顧録の出版取り止めを翻したため(権力争いとは別の理由だったらしい)、間野が表紙見本などを持っていくことになった。園田から一緒に行ってやってくれと頼まれたのだが、杉村はそれを断わる。その帰り、間野は啓によるバスジャックの、人質となってしまうのだ。彼女のバッグには、護身用に買ったナイフが入っていて・・・。

少しづつ謎は解けている筈なのだが、なかなか核心に近づけないもどかしさを感じる。
人の心が一番のミステリーということか。
菜緒子と橋本の仲も気になるし、現社長夫人の今多小夜子に近づく、井出の動向も気になるところだ。