肥満の女性専門?過去のニューヨーク衣服店から学ぼう,集中型マーケティングの例。

今から約三十年前に”The Forgotten Woman”という名前の衣服の小売店がニューヨークに生まれました。

 

その当時、ターゲット顧客の選定で成功したことからたびたび話題になったので、あくまでもひとつの例としてご紹介したいと思います。


 

 

ニューヨークに“The Forgotten Woman”という名の小売店チェーンがある。この店名を日本語に直訳すると、「忘れられた女」ということになる。では、忘れられた女とは誰なのだろうか。実は、この店のターゲット顧客は肥満女性なのであった。通常、男性・女性に限らず肥満な人は衣料を購買するとき、まずサイズをみてから自分の好みを探す。したがって、これらの人々に対する品揃えは普通の小売店ではきわめて限定的である。この店では市場の新たなセグメントとして肥満女性を選択した。つまり、肥満女性は明らかにアメリカでは「忘れらた女」であり、個別対応の対象とはなっていなかったのである。

 

“The Forgotten Woman”の対象顧客は明らかに肥満女性という限定されたセグメントであり、その消費者特性は普通の女性とは明確に異なっている。

 

この小売店のさらなる特徴は、その品揃えが肥満女性のためのパーティ・ドレスなのである。つまり、この店はターゲットを肥満女性と設定したことにととどまらず、「肥満女性のパーティ・ドレス」という消費オケージョンまで特定化したのである。もしこの店がなければ、アメリカの肥満女性はパーティにも行けず、行きたければ自分でドレスを縫わなければならなかっただろう。まさに、集中型マーケティングの実行である。

 

ここで”The Forgotten Woman”店の課題は、顧客集団を絞り、顧客のユース・オケージョンを絞ったわけであるから、これらの顧客に対して何を独自能力として提供できるかということであり、また、セグメント・マーケティングの限界は、ここまでセグメントを限定してしまうとそれ以上の顧客集団へのセグメント拡大が困難になるということである。ちなみに、当店の店員は全員が太めであった。

 


 

この”The Forgotten Woman”のニューヨーク店は大成功し、最盛期にはアメリカ全土で30店舗ほど展開していたそうです。

 

しかし、ヒューストン、シカゴ、ビバリーヒルズといった場所にビジネス戦略が不十分なまま展開したためか思うように売上を伸ばすことができず、1999年の2月に破産申請を出しています。

 

前述のセグメント・マーケティングの限界を破れなかったのでしょうか、真に”The Forgotten Woman”になってしまったのは皮肉ですね。

 

出典「有斐閣:マーケティング戦略第四版」

出典「ニューヨーク・タイムズ2月14日号」